二人手を繋いで提出した婚姻届は無事受付られ、里穂は慎里と共に深沢姓になった。

「俺が岡安の籍に入ってもいい」と慎吾は申し出てくれたが、里穂は心機一転のつもりで慎吾の姓を選択した。

 深沢の両親宅に慎里を迎えにいけば、隠岐家も待っていてくれた。

「結婚おめでとう!」

 親友の音頭により大人達はシャンパンで、子供達は麦茶で乾杯した。

 里穂は彼の両親に、緊張しながら挨拶と許しも得ず子供を産んだこと、長い無沙汰を詫びた。
 それと。
 彼女はごくりとつばを飲み込んだ。

「……あの。慎吾さんの背中の火傷痕、私を助けてくれたせいなんです」

 震え声で告げた。

 隣で慎吾がそんなことを言わなくていいのに、と呟いて彼女の手を握る。

 慎吾の母親が真顔になった。

「慎吾が普通の生活できるまで、『なんでウチの子がこんな目に遭わないといけないの』と思ってた」

「お袋」

 慎吾が止めようとしたのを里穂は遮る。

「いいの」

 慎吾の母がそう思うのは当然なのだ。彼を産んで育てて、一番愛している人なのだから。

「……でもね。火傷を負った後、我が子ながら実にいい男に育ったの」

 だから文句が言えなくなったの、と彼の母は里穂に告げた。