あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

偏見だが、女の自分より男の彼の方がやるせない衝動を抑え込むのは大変だったのではないだろうか。

「好きな()がいるのに浮気しちゃダメだろ」

 恋人は、一番大好きな笑顔を里穂にむけてくれた。  

 たまらず彼女は腕を伸ばした。慎吾がしっかりと抱きしめてくれる。

「慎吾、大好き」
「俺も里穂が大好き」

 どうして、こんな人がいるのだろう。
 なぜ、こんなにも素晴らしい人が自分に用意されていたのだろう。 

 ――お父さんとお母さんだ。
 幸せになりなさいと、彼と逢わせてくれたのだ。

 里穂の双眸に涙がにじむ。
 慎吾が唇を寄せ、吸い取ってくれた。

「慎吾、愛してる」
「里穂。あらためて君を俺のものにする」

 二つの体がつながる。

「あ……」
「つらい?」

「だい、じょうぶ……うごいて?」
「っ、ああ」 


 ゆっくりな動きにすら、感じてしまう。性急な動きに激しく反応しては、次第に深く貪りあっていく。

 互いの手が足が肌が。
 足りないとばかりに相手を求め合う。

 二人は角度を違えては互いに触れる。

「あの日、俺は君に背中にキスをされて、全てを得たんだ」

 慎吾がささやく。

「慎吾も、私の『傷』にキスをして癒してくれた」

「二度と離さない」

 慎吾の双眸に激しい情熱が燃えている。
 里穂は彼の瞳を、ひたと見つめた。

「私も、逃げない」

 互いを見つめあった瞳は、二人の唇が近づくにつれ自然に閉じられていく。

 間接照明に照らされた里穂と慎吾の影は絡み合い、重なり合い。いつまでも離れなかった。