あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

「このパーティに参加したのは『こんな広い会場なら、一人ぐらい奇特な女の子がいるんじゃないか』って考えたからだ。リホがそうだったんだな」

「うん! シンゴの傷は勲章だからね、怖くないよ!」

 里穂が笑顔で言えば、シンゴは嬉しそうだ。
 ……彼女は足音を殺して忍び寄る猛獣に気づいていなかった。

「決めてたんだ、『俺の背中にキスをしてくれた()と一生恋愛しよう』って」

「……過去にもそんな女性がいた?」

 小さな声で聞いた。

「おにーさんは純情なの。そんな娘がいたら手放しっこないだろう」

 愛おしそうに頬を撫でられる。

 里穂は大いに悩んだすえ、考え至った。
 これはもしや、告白されているんだろうか。

 たかが、キスだった。
 そんな大した意味を込めたわけではなく、自分としては友愛のつもりだった。
 これから先、シンゴを本当に好きな女性が愛を込めて彼の背中にささやくこともあるだろう。

 ――それが、とても嫌だと思った。