『……慎里は親父とお袋のところに預かってもらったから。二人とも、大喜びで連れて行った』 

 何気なく言われたが、緊張する。

 自分と彼は相思相愛だと確信している。
 大好きな人から二人きりで夜を過ごしたいと望まれていて、勘違いなどしない。

 里穂も彼と愛しあいたいと切望していた。
 もう、その気持ちを引き止める足枷はない。

「……プレゼント、嬉しい」

 だから返事には迷いはない。ないが、はにかんでしまう。

『里穂は先にチェックインしてくれ。俺も仕事が終わり次第、追いかける』

「わかった」
『じゃあな。あ、里穂』

「なに?」
『愛してるよ』

 耳に六文字が飛び込んできた直後、電話は切れた。

 ずるずるずる。
 足に力が入らない。
 里穂は危うく、床にうずくまりそうになった。
 力の入らない膝を叱咤して、なんとか姿勢をただす。

「もう……! そんなことを言われたら午後の授業身に入らないじゃない……」

 もっと前もって言ってくれれば、下着だってロマンティックなものを買って着けてきたのにと、文句を言いたくなる。
 けれど、里穂の顔は幸せでキラキラしていた。

「慎吾のばか。……大好き」

 手で自分の頬に触れれば、とても熱い。