あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

「なによりも大事で大好きな里穂と息子を運ぶのは俺の特権。なー慎里?」

 そうだとばかりに慎里があぶう、と声を出した。
 里穂は顔を上げて、なんとか微笑んだ。

「お母さんと慎里、おじいちゃまとおばあちゃまにお礼を言わなくちゃね」

 慎里がにぱあと微笑みかけてくれ、慎吾の唇が里穂の耳に触れる。

 里穂は真っ赤になって、男の肩に顔を埋めた。
 慎吾は二人分の重さを感じていないかのようにスタスタと歩く。

 ふわふわと夢ごこちで運ばれていく。
 慎吾は慎里をおろしてやると、里穂をを抱きしめたままソファに座った。

「里穂に渡すものがある」
「……なに?」

 うっとりした表情のまま、里穂は訊いた。
 慎吾から渡された書類を見て、彼女は目を見張った。

「これ……!」

『おかえりやす』が建っていた敷地の名義が岡安里穂になっていた。