あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

「……なんで」

 問う、シンゴの声が掠れている。
 里穂は背中の傷痕をゆっくりとなぞった。

「助けてもらった人はおにーさんにすっごく感謝してる。けど、背中に消えない痕を残したことに負い目も持ってる。……でもね。『勲章に思ってる』って言ってもらえたから、その人は二重に救われたの。だから、ありがとう」

 出来れば自分を救ってくれたあの青年もそう思ってくれていればいい。
 祈るような気持ちで、シンゴに伝えた。

 そっとシンゴの腹に手を回して、体重をかけないように気をつけながら逞しい背中に頬を添える。
 しばらく、そのまま二人はどちらも動かなかった。

 彼の背中が震えているのかなと里穂が気がついた時、シンゴの手が彼女の手を掴んだ。
 引っ張られたと思った時にはベッドに押し倒されていた。
 彼女にまたがったままシンゴが包帯のマスクを外していくと、精悍でありながら秀麗な男の顔が現れた。

「恋人もいざ、ベッドで全てを見せるとドン引きされるんだ」

「そんなの、酷すぎる! シンゴのせいじゃないのにっ」

 本気で怒っている里穂に、彼は柔らかい笑みを浮かべた。
 待ち望んだものを見つけた、うっとりと蕩けそうな表情を。しかし、目だけが獰猛だった。