「あんな黒ダヌキ、社会的に抹殺するのは難しくはない」

 だが、十五年という時の流れが事実を腐食させる。

「癒着が現場まで浸透していなければ、事故・事件の両面から消防と警察で調べたはずだ」

 慎吾は望みをかける。

「当時の上層部はとっくに異動しているか、あるいは」

 戸黒関連の企業に天下りしているはずだし、利益を供与されている以上口を割るわけがない。

「突き崩すとすれば、現場検証にあたった消防隊員や鑑識だな」

 メデイアが食いつけば、良心の呵責に負けて漏洩する。
 今は薄汚れている正義心の煤を取り払ってやればいい。

 地元の新聞はだめだ、権力者とズブズブな可能性が高い。

「『ムラのルールには立ち入らない』が護孝との約束だからな……。動く前に一言断っとくか」

 そっと二人の目元にキスしてから立ち上がり、別室へと向かいながら電話をかける。

「護孝? ……情報早いな。そうなんだ、その件で連絡した」

 しばらくCEOの言葉に耳を傾ける。

「里穂の顔が出てたりする動画は削除依頼してくれたのか、助かる」

 これ以上、里穂を好奇の目に晒して傷つけたくない。慎吾はほっと安心したあと、好戦的な表情になった。

「……ああ、あとは俺がやる。了解、CEO殿のお許しがでたから、『彩皇』の支配人として地道にかつ派手にやってやる」

 楽しそうに戻ってくると、慎吾はどっかりと腰を据えた。

「さて、と」