あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

「両親はある人から散々、土地を譲るように強要されていた」 

 赤黒かった戸黒の顔は青黒くなった。

「うちが放火された理由と誰が命じたかについては【おかえりやす】の敷地をずうっと手に入れたがっていた戸黒さん、貴方が一番よく知ってるんじゃないの?」

 犯罪。
 現職議員が放火を示唆するなんて、一大スキャンダル。
 警察に通報。
 いや、ゴジップ番組に情報を送れば、いくらで売れるかな?

 そんな周囲の声が里穂だけではなく、戸黒にも聞こえているだろう。 

 今や戸黒の顔面は蒼白だ。
 しかし、気圧されたことに恥じたのか戸黒は一際大声を出す。

「なにを失礼なことを言っとるんだ、小娘が! お、お前の父親の勘違いだ! 名誉毀損で訴えるてやるからなっ」

 さきに女性を罵って晒し者にしたくせによく言う。
 入場口前は、白々とした空気が流れていた。