あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

「あなた達はうちの焼け跡でなんの調査をしたの」

 周囲はそれぞれの胸中で思う。

 女性の家の火事が失火であるように。もっともらしい偽証をでっちあげるために。仮にも市議会議員という公僕が罪を犯した。

 周囲からヒソヒソ声が聞こえてくる。

「警察や消防署に嘘の発表をするよう、命令したのは誰?」

 里穂の口調は静かだった。

 しかし戸黒の酒焼けした顔には、つうーっと汗が流れ、彼の表情は醜く歪んだ。

 周囲は、民の為に働くべき人間が公の権力を悪用したことに怒りを覚えた。

「事故調査委員さんは、繁盛していた旅館の宿泊客が急にゼロになったのはどうしてか知ってるよね」

 この女性の家族はずっと嫌がらせをされていたのだ、と周囲は悟る。