あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

「な、なにを言ってるんだ小娘が! 消防も警察も、厨房からの失火だと。原因は、お前の不始末と報じていただろう……っ」

「本当はボイラー室が放火されたの。うちの旅館の見取り図が新聞にでも載っていれば、あなたの言ってることは変だと誰にでもわかる」

 里穂の閉ざされていた記憶が、いきなりクリアになる。
 自分達は嵌められたのだ。


 里穂は自分のしでかしたことが恐ろしくて、なにもかもから耳と目をふさいでいた。
 しかし、両親は気がついたはず。

 彼らは自分達の娘が放火したのではないと知っていた。

 ーー私は戦える。慎吾に愛されてて、父も母も自分達のせいじゃないことを知ってる!

 里穂は昂然と顔をあげ、目の前の男を見つめた。

「そ、れは、」

 彼女の勁い視線に圧された戸黒が、しどろもどろになる。

 先ほどまで怯えていた彼女と、まるで入れ替わってしまったようだ。