しばらく慎吾の胸にもたれかかっていた彼女がしゅん、とうなだれた。

「コックコースを選択すれば、家でも練習できたのかなあ……」

 まだ気にしていたらしい。
 慎吾がそっと彼女の髪に唇で触れる。

「里穂が気になるなら、今度の休みの日にでも家庭料理を一緒に練習するか」

 慎吾が慰めてくれる。

 しかし慎里から目が離せないので、二人で一緒にキッチンにこもるというのはなかなか難しい。

 残念だなあ、と里穂はこっそり思う。

「慎里がちょうどよく寝てくれたらね」
「任せとけ」 

 自信たっぷりに言った慎吾が頼もしかった。

 翌日、言葉通りに慎吾は息子を構い倒し、眠ってくれた慎里のおかげで二人は料理を作ることが出来た。

 冷凍グラタンをオーブンに入れ、サラダを作りバゲットをトースターで温めただけだが。
 ワインを片手に好きな人とおしゃべりしながら、ゆったりと食べる時間のなんと贅沢なことか。

 風呂から上がってみれば、ぐっすり眠っている慎吾と慎里がいた。

 息子の額にキスをし、こっそり恋人の頬にキスしようとしたらフレンチキスをされてしまった。