「あれだけグレードの高い技術を叩き込まれたら、そりゃエスタークホテルは一流なはずだよね。ものすごく納得した!」

 エスタークメソッドはいちいち理に適っており、洗練されている。無駄な動きが少なくなり、技術が向上していくのがわかる。

 それにホテル学校を卒業し、実務をある程度経て試験に合格すればリーダーへの昇進が約束されている。

 今までのように働き詰めをせずとも、慎里の為の学費を貯めることができそうなのは、学ぶ意欲を増進させた。体力的にも楽になった。

 なにより慎里の顔を朝晩見られるのは、何よりの喜びである。

 里穂が慎吾に抱かれている我が子を撫でながらポツリと呟く。

「以前は慎里が熱を出しても有給が使えなくて」

 給料カット了承で休むか、保育園に無理を言って預けるしかなかった。

 慎吾がピクリと眉を顰める。

「でも、エスタークは福利厚生がしっかりしてるから、ありがたいの」

 ホテルに併設する保育園は宿泊客が利用するから、敷地内の診療所と提携して病中保育もしっかり機能している。

「エスタークは客とスタッフ、地域。三つ共幸せにならなければいけないって理念だからな」

「すっごく難しいことだよね。でも、すっごく素敵だと思う!」

 花が咲いたような笑顔を慎吾に向けるものだから、彼はたまらず彼女の唇に自分の唇で触れた。

 ……里穂は逃げないで、受け止めることが多くなった。