「おとしゃっ、おとしゃ!」

 慎里は慎吾が姿を現してから興奮しっぱなしである。

「……お帰りなさい」

 里穂はささやいた。

「里穂、慎里。ただいま。会いたかった」
「私も……」

 彼女が言える、精一杯。
 慎吾が慎里の目を手のひらで塞いだ。

「キスさせて」

 慎吾の目が真剣だった。

 里穂も熱に浮かされてうなずく。即座に唇が柔らかく温かい感触に覆われた。

 再会後、初めての口づけだった。

 慎吾に抱きとられてからの慎里はひたすら慎吾に甘えまくった。

 そして里穂も傍にいないとぶぶう、と不満げな声を漏らす。

 ……我が子に促されるまでもなく、里穂も慎吾の傍から離れるつもりはない。

 里穂も我が子も大好きな慎吾に会えてすっかり元気になった。
 我ながら現金とも思うがニコニコするのを止められない。

「おとーさんが帰ってきてくれたから慎里、嬉しくて仕方ないみたい」

「里穂は?」

 わかっているだろうに、里穂が恋慕している人は慎里を抱っこしながら真剣に問うてくる。

「嬉しいよ。この一週間、すごく長かった……」

 吐息のようにつぶやけば、俺も、と返ってきた。

「里穂と慎吾の待つ家に戻るのが当たり前になってて。二人の体温を感じながらじゃないと眠れなくてさ」

 同じだと思った。
 もう、慎吾の匂いや温もりがないと寂しくて寒くてたまらない自分がいる。