「仕事をして家事をして、その上育児もこなせるなんてスーパーすぎる。俺はできない。だから、里穂だけできるようにならないでくれ」

 ウインクを寄越された。

「それに、見た目は大事だぞ? 豪華なセッティングでデリを食べるとグレードアップした気になるしな。慎里もべビーフード、いつもよりうまく感じるだろう?」

 慎吾に訊かれて慎里はうまうまと大喜びで食べ、その日は一度も吐き飛ばさなかった。

「こいつ、母親孝行だな。俺が用意してやると必ずぶーってやるのに」

 我が子のほっぺを突つきつつ慎吾は楽しそうだし、里穂も内心息子の贔屓が嬉しい。

「慎里はお母さん、大好きだもんねー」

 息子へにっこり微笑みかけると、きゃいきゃいと慎里が喜んだ。

「お父さんだって、慎里のお母さんが大好きだもんねー」

 慎吾がわざと拗ねたように言うので、里穂はどうして返していいかわからなくなる。

「慎里。お父さんに口説かれて真っ赤になるお前のお母さん、とっても可愛いよな」

 慎吾が息子に問いかけて、慎里がきゃーうと歓声をあげるので、里穂はとうとうテーブルに突っ伏してしまった。