パパが少し静かになったこの時を、狙っていたような感じだ。 「もうすぐ新向井ですが、一丁目の方ですか?それとも右に曲がる四丁目の方ですか?」 「一丁目の方です」 私たちは不意に同時に答えてしまった。 タクシーの運転手がどのくらい私達の話を聞いていたのか分からないが、私たちがタクシーを降りる時、まるで異星人を見るような目つきになっていたような気がする。 タクシーを降りた私たちは、秋めいてきたマンションの敷地を、肩を並べて歩いた。