彼はやくざでも何でもありません。


極々ふつうの大学生です。


しかもワンダーフォーゲルなんて健康的なサークルに所属する・・・


私は怯える運転手にそう言ってやりたかった。


しかしそんな事は許されるはずもない。




彼はタクシーが自分のアパートの前に着くと、無言で料金を支払い、タクシーを降りた。


そして私が降りるのを待たずに、スタスタと歩き出した。