外食したしゃぶしゃぶ専門店で、テーブルの上で燃える火を見た事はある。


だけどそれはとても広いテーブルの真ん中の、切り取られた部分で静かに燃えていただけで、こんな風にむき出しで変な音を立てながら燃える炎ではなかった。


私は目を寄せて卓上コンロの炎を見つめていた。


「はい、凛ちゃん」


気が付くとおばさんが器に鍋をよそって、斜め前から私に差し出してくれていた。


いつの間にか香田さんから凛ちゃんになっていた。