大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する

 リリアナたちも氷の上に立つ。
「エサはイモムシとスライムだんごの二種類があるけど、どっちにする?」
 リリアナがネリスたちに木箱を差し出した。
 イモムシが入っている箱は蓋を閉めたままだ。
 本来ならばワカヤシ釣りのエサはイモムシだが、虫が苦手なリリアナはイモムシを素手で触ることに抵抗がある。
 マリールもそうかもしれないと思い、代替品がないかと悩んだ末に思いついたのがスライムにエサと同じ味付けをすることだった。
 
 スライムの味変魔法は、どんな味にしたいかを想像しながら魔力をこめるため、本来は味を知らなければかけられない。
 この日のために、エサ用のイモムシを買ってテオに匂いをかがせ、ブルースライムのゼリーに味付けしてみる試行錯誤を繰り返した。
「あのなあ、自分で嗅いだ方が早いんじゃねーか?」
 テオはそう言いつつも、直接イモムシに鼻を近づけて匂いをかぐことを断固拒否するリリアナに辛抱強く付き合ってくれた。
 テオいわく、ワカヤシ釣りのエサとして使用するイモムシは、焼いてもいないのに香ばしい匂いがするらしい。

 今朝、リリアナとテオはエサとなるスライムを調達するために初心者エリアへ行き、ハリスはワカヤシをフリッターにするための牛脂を調達しに草原エリアへ行って、それぞれ準備を整えてからネリスとマリールに合流した。
 
「両方もらっておこう」
「スライムのほうは、大きさも形を好きなように練って使ってね」
 イモムシと遜色ないエサになったと自負しているリリアナだ。
 ネリスに木箱をふたつとも渡し、次にアイスドリルの使い方を説明した。
 実演しながら氷に穴を開け、もうひとつはふたりでやってみてとアイスドリルをマリールに手渡した。

 氷の上で待機させるのはさすがに酷だろうと考え、コハクは湖の外側で調理に準備をするハリスのそばにいてもらった。
 ハリスがマジックポーチから取り出した折り畳み式テーブルを組み立て、魔導コンロをセッティングするのを確認したリリアナは、次に視線を遠くに向ける。
 そこではすでにテオが釣りを始めていた。

 勝負とかいいながらフライングしてるじゃないの!
 眉をひそめるリリアナの耳に、マリールの楽しそうな声が聞こえる。
「ネリス様、もう少しですわ!」
 アイスドリルを懸命に回すネリスを、マリールが応援している。
「よし!」
 貫通した手ごたえを感じたネリスがマリールに笑顔を向けた。
 
 いい感じだわ!
 リリアナは顔を綻ばせながら、少し離れた位置で釣りの用意を始めた。