スライムの味変魔法を習得したリリアナは、これをいつ実践しようかとウズウズしていた。
 その執念が実ったのか、ギルドの依頼掲示板に【急募! スライムの皮 多数】という大量受注の依頼が貼りだされた。

 スライムの皮は水で戻すとプルプルのゼリー状のかたまりになる。
 保温機能もあり、温水で戻せばじんわりとした温かさを一定時間持続できるし、冷水を使えばひんやりとした保冷剤になる。
 普段は、あったら便利だけどなくても別に構わない程度の代物だが、年に2度ほど需要が高まる時期がある。
 高熱の出る伝染病が流行る季節だ。
 大人なら氷嚢を使えばいいけれど、子供の場合は熱にうなされて頭を動かすため額や首にほどよく張り付くスライムの皮が重宝されるというわけだ。

 しかしブルースライムは獲得できる功績ポイントが低く皮の買取単価も安いため、この手の依頼を請け負うのは初心者ばかりで効率よく目標数を集められないことが多い。
「世界の子供たちのために、この依頼を受けるわよ!」
 そんなもっともらしいことを言っていたリリアナだったが、ブルースライムの生息地に着いた途端、大きな鍋を取り出した。

「さあ、じゃんじゃん食べるからねー!」
「結局そっちかよ」
 張り切るリリアナを見てテオとハリスは苦笑していた。