大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する

 短気で不器用なテオに繊細な作業を任せることはできない。そこでテオには小麦粉をこねる作業から始めてもらったのだが、最近ではそれがすっかり板についてきた。
 小麦粉だけでなく家ではソバ粉をこねるのもテオに任せている。
 おかしいのは、調理する時に必ず花柄エプロンを身に着けることだ。本人曰く「気合を入れるため」らしい。ガーデンの中にもいつも持ち込むものだから、リリアナとハリスは最初のうち笑いをこらえるのに苦労した。
 
「美味しくなれ!って思いながらこねると、本当にそうなるんだ」
 先日、テオの作るソバパスタはとても美味しいと褒めたら、彼は得意げに笑った。
「主食が干し肉だった野生児がそんなことを言うだなんて!」
 感激したリリアナが思わずテオの頭を撫でると、
「子供扱いすんじゃねえ!」
と顔を真っ赤にしていたのは、照れ隠しだろうか。
 リリアナは隣で小麦粉に水とオリーブオイルを混ぜるテオの横顔をチラリと見て、思い出し笑いをかみ殺す。
 
 テオがフライパンで生地を焼く。麺棒で丸く薄く伸ばして両面をサッと焼いたらトルティーヤ生地の完成だ。
 焼き上がった生地をそのまま置いておくと時間が経つにつれ乾燥して硬くなってしまう。それを防ぐために通常ならば具が完成するまで布巾をかぶせておかないといけない。しかし湿度の高いこのエリアでは不要だ。

 リリアナがマンドラゴラの体を薄く切って、トルティーヤの上にのせていく。それを終えると今度は、ハリスが捌いてくれたオオナマズの身をひと口大に切ってフリッター作りに取り掛かった。

 毒ガエルの調理は全てハリスに任せることにする。
「ナマズとカエルは両方とも味が淡白だから、カエルの方は香味炒めにするか」
 その言葉だけでお腹の虫が騒ぎ始めたリリアナは、ナマズを揚げながらチラリとハリスに視線を向けた。
 カエル肉の見た目は鶏肉によく似ている。ハリスはカエル肉を細長く切り、マンドラゴラの葉の部分も同じように切ると、あらかじめ熱しておいたフライパンへと放り込む。

 フライパンからジュウジュウ大きなと白い湯気が上がり、ハリスが豪快に鍋振りしながら炒めている。
 あまり見惚れている場合ではない。カエルの香味炒めがあっという間に完成しそうだ。
 早くナマズのフリッターも完成させてトルティーヤを食べたい!
 リリアナは気合を入れ直してナマズを揚げ続けた。