大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する

「ねえ、先生。カエルをそのまんま煮たり焼いたりしないわよね?」
 おそるおそる尋ねるリリアナに、ハリスはくくっと笑う。
「安心しろ、わからないようにするから」

 昆虫型の魔物だけでなく、ヘビ、トカゲ、カエルのようなゲテモノ系全般が苦手なリリアナだ。できれば遭遇したくないし戦いたくない。まして(しょく)すだなんてもってのほかだ!と思っているが、このエリアの耐性バフがつくのならそうも言っていられない。
 ここへ来た第一の目的はジョセフの手がかりを見つけることなのだから。
 
 まさか、ひと抱えほどの大きさのあるカエルをそのまま姿煮や姿揚げにはしないだろうと思ってはいるが、念のためカエルの肉だとわからないようにしてほしいと懇願するぐらいは許されるだろう。

 リリアナは毒カエルを捌くハリスに背を向け、マンドラゴラの調理にとりかかる。まずは真水でもう一度よく洗って泥をしっかり落とすところからだ。
 
「毒は爪だけなのか?」
 テオは毒ガエルに興味津々の様子でハリスの横にいる。
「前肢と内臓は食べないほうがいい」
 毒ガエルの爪は相手を麻痺させる弾丸や矢じりの材料になるため、なかなかいい値段で買い取ってもらえるらしい。

「テオ、小麦粉の生地を作ってもらえるか? 今日はトルティーヤだ」
 オオナマズの処理に取り掛かりはじめたハリスの指示にテオが頷く。
 テオを留守番させてマルド地方での潜入捜査を終えて帰ってきて以来、テオは積極的に調理を手伝うようになった。
 しかし短気で不器用であるため、まだ繊細な作業を任せることはできない。そこでテオには小麦粉をこねる作業から始めてもらったのだが、最近ではそれがすっかり板についてきた。