Filigran.



『さぁ続いては皆さんお待ちかね、午前の部のラストです!』


熱の入ったアナウンスが聞こえてくると、


同じプレハブにいる人達が私に話しかけてくれた。



「絶対感動するから、外に出て見てみ」


「俺らも一緒に見るから」


そう言ってくれる優しさに「ありがとうございます」と返して、


彼らに導かれて弓弦君の開会宣言のときみたいに外に出ると、


観客の人たちも、今か今かと楽しみに待っているらしい。





『毎年内容の事前告知が無いシークレットステージ、


今回は本人達たっての希望で、アナウンスでの発表も控えさせていただきます!』


『それではお楽しみください、どうぞ!』


ブチリ、とアナウンスのマイクが途絶えたのが分かった。






瞬間、スピーカーから爆音で音楽が流れだす。




私の心は一瞬で沸騰してしまった。



何度この曲で、ようやく夢の時間が始まるとワクワクしただろう。


だってこれが聞こえたら…、




大好きなあの人たちに会えるから。






近づく4人のシルエット。



『みんな盛り上がっていくよ!』


『俺のこと、ちゃんと愛して?』


『元気を届けるからね!』


『…目を逸らさないで』



『GlassCraft』にしか使えないovertureを背に、彼らの姿が露になる。




揃って立つその姿を認めて、視界が揺れて滲んでしまう。






『僕たち4人のステージは本当にこれが最後です』


『僕』という一人称で、そのスイッチが入っていることが分かる天海蓮人。




『この学校の体育祭だけは好き勝手して良い…そうでしょ?』


気だるげに語尾を上げる話し方をするのは、新條ノア。




『OBなのに来ちゃったんだから、みんな楽しんでよ!』


リーダーで元気印、グループでは最年長の日野聖生。




『これが俺の卒業ライブだから、心に焼き付けて』


クールで飄々としているのに、どこか熱を感じる千夜弓弦。






あぁ、もうだめだ。泣いてしまう。


あなたの最後を見られなかった私の後悔まで、


こうして救い上げてくれるんだね。