ゴールと同時にお題が発表されていく。
『眼鏡をかけている人』や『先生』などごく普通のお題が発表されていく中、
先ほどの人と天海君の二人がゴールをした。
『普通科2年、高橋君のお題は何でしたか?』
進行の人が、天海君と走っていった彼に聞く。
どんなお題で人気アイドルの天海蓮人が選ばれたのか、と
その場にいる全員が固唾を飲んで見つめる。
出場者の彼の声が響く。
『「特撮ヒーローになった人」です』
…あれ、借り物競争ってそんな特殊なもの?
周囲の人たちはざわざわしているし、
私も思わず目を見開いて驚いてしまう。
それはもれなくこのプレハブも同じ。
特に新條君なんて
「そんな天海蓮人しか答えにならないお題ある?」と涙を流しながら笑い転げている。
弓弦君もおかしそうに口角をあげて、
「蓮人も不思議そうな顔してる」と呟いていた。
『かなり局所的なお題ですね…、天海さんいかがですか』と
お話をふられると、アイドルモードに入っている彼は
『僕の経験が高橋君のお役に立てたなんて光栄です。変身!』
と決め台詞とポーズまで披露して観客を沸かせていた。
さっきまで隣でグミをもぐもぐ食べながら、
ニコニコとパンフレットを眺めていた彼とは思えない。
「やっぱり蓮人はアイドルだ」と弓弦君が呟くと、
新條君は柔らかく笑って、
「弓弦もちゃんとアイドルだったじゃん」と優しい声色で言った。
このグループの信頼関係が垣間見えて、私はわざと口を噤んだままでいた。



