午前の競技が始まって進行していっても一向に三人は動く気配がない。
それどころか、
「雪乃、喉乾いてない?」とペットボトルを渡してくれたり、
「姫~このお菓子美味しいよ~」とグミをくれたり、
「塩分が大事!」とタブレットをくれたりと何故か私のお世話に邁進している。
「…なんか私至れり尽くせりすぎる気がするんですけど」
と言っても、弓弦君は「え?」と言って微笑んで
「同じ学校だったらこれが毎日だよ」と言われる。
…こんなこと毎日されたら、もっとだめな人間になっちゃうなぁ。
と思っていたら、
借り物競争のときにとうとう動く人が現れた。
しかも出場者ではなくて…、
借り物競争が進む中、
「すみません!天海蓮人さんいませんか!」
私達のいるプレハブにやってきたのは、
芸能科とは違う色のジャージ…恐らく普通科の、男の人だった。
「え?俺?」
隣で目を丸くしている天海君に「来てもらって良いですか」と頼んでいる。
「もちろん良いけど…」
不思議そうな顔で「なんか行ってくる」と言い、彼は外に連れられて行った。
「…お題なんでしょうね」
「素とキャラが違いすぎる人とか?」
「ならノアと悩んで選べないでしょ」
「それもそうかぁ」
私の問いかけに新條君が答えるけれど、
無慈悲な弓弦君に一蹴されていて何だかおかしかった。



