お互いにハチマキを付け合うという、
とんでもないスペシャルイベントを経ても心臓が強くなる兆しはない。
「ノア向こう行って。俺が隣だから」
「蓮人でも良いのになんで俺⁉」
「お前だって『色気たっぷりのチャラ男』でしょ、雪乃の隣は危ない」
そう言って私の隣にしれっと座る弓弦君と、
「そうだね!キャラがね!そうじゃないの良く知ってんだろ!」
と、少し離れたところで騒いでいる新條君。
右隣では「楽しみ~」と天海君がタイムテーブルのパンフレットをパラパラめくっている。
…『GlassCraft』の楽屋、想像つくなぁ。
「…にしても、私がハチマキ付ける必要ありました?」
と左隣に座る弓弦君に尋ねると、彼は何だか無邪気に微笑んで、
「今日のコンセプトは『同じ学校』です」と軽やかに言う。
と思いきやすぐに暗い表情に変わって、
「だから本当はお互い呼ぶ捨てで砕けた口調が良いんだけど、いいよ」
と恨めしそうに言うから「…ごめんなさい?」と謝っておいた。
「皆は何の競技に出るんですか」と聞けば、
3人とも口を揃えて、
「言わない」
「秘密かな~」
「内緒内緒!」
と言うから、おぉ…と気圧された。
「でもヒント~!俺とノアは1個しか出ないけど、弓弦は2個出るよ~」
と天海君が教えてくれる。
うん、何にも分からないかな。
「…楽しみにしてますね」と言えば三人とも満足そうに頷いていた。



