Filigran.



アナウンスが続く。


『第40回体育祭を開会致します。今年の開会宣言は、


前年度白組主将である日野聖生さんの指名で一任されました、』



遠くから、白い特攻服を着た一人の男性の影が近づく。


金色の髪が揺れて純白のハチマキもたなびいている。




『今年度白組主将、千夜弓弦さんお願いします。』





まるで王子様のような出で立ちで、私の知らない力強い表情をしている。


彼がその一歩を踏み出す度、思わず平伏してしまいそうなオーラだった。



『はい』



その後ろで団旗を持つ男性を従え、彼は指令台の前に辿り着いた。




「…あの特攻服見て、肩章と大綬のアレンジがされてるでしょ」


「芸能科に所属する主将しか着られない服なんだよ」



そう教えてくれる新條君の言葉で、だからあんなに優美に見えるのかと納得する。


今日の金髪と相まって異国の王子様にしか見えない。




マイクの前で話す弓弦君を見て、


彼がああやって話しているのを最後に見たのが、ずっと昔のように感じられた。





マイクを通してもくっきりと聞こえる彼の声が、


彼の性格そのものを表しているみたいだ。





『…正々堂々戦うことを誓います。芸能科所属白組主将、千夜弓弦』



喝采の中お辞儀をする彼を見て、



あぁ、そうだった。


『千夜弓弦』って手の届かない遠い存在だった。


そんな、もうずっと前に分かり切っていたことを思い知った。