「基本はプレハブの中から見ることになるんだけど、ここは芸能科の3年の一部が使う場所」
「ここが一番見やすいんだよ~」
新條君、天海君の順に話してくれて、連れてきてくれたのは白いプレハブ小屋。
中に入れば複数人の男の人たちがいて、
よく見なくても見たことのある俳優さんやモデルさん達だと分かる。
彼らはスマホに目を落としていた顔を上げてこちらを見るなり、
「弓弦の子?」と二人に聞いていた。
それに対して天海君が、
「そうそう、お前らが近づいたら弓弦すぐ飛んでくるよ~」
ニヤリと口角をあげながら言うから、その人たちもおかしそうに
「だろうな」と笑う。
主演ドラマの番宣でテレビで見たばかりの俳優さんが
「せっかく来てくれたんだから楽しんでいって」と声をかけてくれた。
「…ありがとうございます」と緊張しながら言えば、「うん」と頷いてくれた。
「そろそろ王子様の出番じゃない?」
そう新條君が言うなり彼は徐に立って、
「一緒に見に行こうか」
とその外へ連れ出してくれた。
6月と言っても、晴天の灼熱は肌を刺す。
「…もしかしてずっと弓弦君が長袖なのって」
そう思い当たった時、新條君は頷いて
「あいつ肌白いでしょ。すぐに皮膚赤くなっちゃうから」と教えてくれた。
刹那、遠くで沸きおこる歓声が聞こえた。
何かが始まるのだと分かる。
「…ちゃんと見てやって、君のための王子様だから」



