「…4人で戦うって約束したのにな」
天海君と新條君がふざけあっては笑い転げて
無邪気に走り回るのを見て、
ふと、弓弦君がそう呟いたのが聞こえた。
私はまだ、
弓弦君がマイクを置いてステージから降りた理由も、
最後のライブで涙を流した理由も、何にも知らないままだった。
体育祭がまもなく開始されるというアナウンスが聞こえる。
弓弦君は、
「こいつらはうるさいだけで何にも害がないから」
「だから絶対、このニ人の目が届くところにいて」
「…じゃあ、ちょっと行ってくる」
とだけ言ってから、本当に抑えめに控えめに
私の頭を軽く撫でてから向こうへ走っていってしまった。
なんだかライブでも見たことのない、緊張した顔をしていたから。
「…頑張ってください!」
今から何があるのか分からないけれど、走っていくその背中に声をかける。
彼はすぐに振り返って「まかせて」と音のない声で言ってくれた。
ひとしきりじゃれ合った後の天海君と新條君が隣にやってきて言う。
「…それじゃあ姫、王子の勇姿を特等席で見ましょうね」
「ノアお前かっこつけんなよ~」
「今の俺決まってたくね?騎士役きそうかも」
いや、まだじゃれあってた。



