桜は走って走って、私に飛びつくと、そのまま低木の茂みのなかへ
身を投げた。

車は何事もなかったかのように、エンジン音を鳴らしながら、あっさりと
そのまま横を通りすぎる。

私は放心状態のまま桜に手をひっぱられ、ゆっくりとなんとか立ち上がった。
いかにも不機嫌そうな桜に、またきっと怒られると身構えているとーー。

がばっと、力強く桜に抱きしめられた。
その行動に私は理解が付いていかずに、頭が混乱する。

「麗、良かった……、無事で」
「さ、桜……、ごめんなさい」

桜は静かに私から身体を離す。

「俺、麗に会いたくて。ここをぶらついてたら、お前のこと見つけたんだけど、
まさか、車に引かれそうになったところを助けるなんて、ほんと予想外」

淡々といつも通りに喋る桜に私は疑問を抱く。
「どうして? 会いたいって……、私の事、嫌いになったんじゃないの?」