抱きしめてはくれている、けど、こっちを見てくれない
桜に対して私はーー。

「こわして」

「……は? お前、なに言ってーー」
私は桜の頬に思わず自分の唇を軽く押し付けて、すぐに離す。

「桜になら、もう、こわされたっていい。もう、何されたっていい。
私ね、今気づいた。私、世界中の誰よりも好きだよ……、桜」

「……、っ!」
桜はやっとこっちを振り向いてくれて、そして彼の顔は朱に染まっていて。

「俺も好きだ……この世で誰よりも」

暫く私たちは、その場で抱きしめ合っていた。