「失礼しました」
私は校長室の重い扉を閉めて、やっと終わったんだと思い、肩の荷が下りた。

「顔色悪いぞ? そんなに緊張したのか?」

きょとんとする桜の様子に、私は自分の精神力の弱さを痛感させられる。
桜は不良だから、喧嘩に比べたらこんなの造作もないことなのだろう。

「うん、ちょっとね」

作り笑いを浮かべて、私は一応平静を装うとしたんだけれど、すぐにその場に
しゃがみ込んでしまう。

「麗。俺が運んでやろう」
「ーーへ? って、きゃっ!?」

身体が重力に逆らってふわりと一瞬浮かぶ。
そして、気づいたころには、桜に、お姫様だっこされていた。

「ななな、なにするの桜!? みんな見てるよっ……!?」
顔を赤くして、手足をばたつかせている私を、桜はにやにやして見ている。

「姫は、特別な扱いを受けることになっている。これぐらい普通だろ?」