モヤモヤした気持ちを抱えながら、お昼休みの鐘が鳴る。
お弁当箱を机の上に置いてみたけれど、食欲もでないし、食べる気もない。

肘をついて、ぼうっと桜の雨が降っている窓の外を見る。

「あの……、花ヶ迫さんだよね?」
「え……、あ、はい。そうです、けど……」

突然、私に声をかけてきたのは、同じクラスだけどあまり喋ったことのない
男子生徒だった。

「俺、入学式の時から、花ヶ迫さんのこといいなって思ってたんだけど、
なかなか話し掛ける勇気がでなくてさ……、でも、今日から君の前の席に
なったから、仲良くしてくれると嬉しいな」

“前の席になった”と言う本人に、私は心が引っかかる。

「え? 席替えなんてどうして急に?」
きょとんとしながら、私は言い返した。

男子生徒から「生徒会長から何も聞いていないの?」と聞かれて首を縦に振る私。
すると、彼は口をゆっくり開いて説明し始めた。