「あの、朝は失礼な態度をとってごめんなさい。実はーー、」
「僕が他の女子とキスしていたところ、見てましたよね」

「!!」

ハッキリと言い切った六華くんの表情は、相変わらず王子様スマイルを
浮かべている。

「でも、貴方がそのことを誰に言おうと、誰も信じてはくれませんよ」
「ど、どういうこと……?」

「僕は、この学園の生徒会長、つまり、学校で一番偉いのは僕なんです。
そして、生徒や先生から厚い人望を集めている。誰も麗さんのことなんて
信じてくれません」

「……っ、」

何も言い返せない自分が、悔しくて、情けなくて仕方がない。
思わずぎゅっと拳を握りしめた。

「彼ーー、五鬼上 桜は喧嘩っぱやい、野蛮な性格なんです。麗さんは、
それがわからないんですか? しかも今日一緒に登校してましたよね?」

「ち、ちがう。桜は確かに不良だけど、根っから悪い人だって
決めつけて欲しくない」