「ねぇねぇ、見たでしょ!? 花ヶ迫さんがあの五鬼上くんと登校している
ところ!」

「うん、私もびっくりした。花ヶ迫さんって普段クールなのに、あんな風に
笑うんだね~」

「それもそうだけど……! 五鬼上くんって無断欠席しまくりの問題児じゃん?
あんな危ない人に関わるなんて、花ヶ迫さん、一体何を考えてるの……!?」

桜と昇降口で別れてから、教室に続く廊下を歩いているとーー、偶然すれ違った
同じ学年の女の子のヒソヒソ声が耳に届く。

ほとんど男子だらけの学園の中で、女子生徒の存在や言動は思ってたよりも
目立つ。

決して地獄耳ではない私だけど、そのせいで話しの内容は不思議とまるわかりだ。

みんなからは恐れられてるんだな、桜って……と、私は心の中でちょっと
複雑な気持ちになる。

自分の教室に入り、机に座ると、ふと入学式の日からぽっかりと空いている
すぐ前の席に目が行く。