「あー、麗。またそんな顔するな。俺が泣かしてる悪いヤツだと
思われるだろ」

「……へっ!? わ、私は別に、普通だけど……、」
言葉を濁らせながら、視線を下にさげる私。

「……麗が思ってるように、さっきのは嘘だ。俺はーー、俺を見つけて
くれる“姫”と出会う為にこの高校を選んだ」

「見つけてくれる……“姫”?」

「ああ。俺は小さい頃、両親に捨てられて養護施設で育った。だから、愛とか
好きとか、そういう感情がよくわからない。わからないというより、欠落して
しまってる」

私は黙ってじっと桜の話しに耳を傾ける。

「だから、俺は何かがいつも足りなくて、それを埋めるように不良にもなった。
けど、不良仲間とつるんでも、得るものは何もなかったんだ。そんな時、この特殊高校
の存在を知って、ピンと来て。ここなら、俺に無いものを与えてくれるヤツが
見つかるんじゃないかってーー」

「……」

「それで、俺はこの学園に入学するのを決めた」