「ねぇ、桜はどうしてこの学園に入学したの?」

昇降口にもう少しで辿りつきそうなところで、私はそう隣を歩く桜に
ふと気になったことを口にした。

でも、彼の答えはシンプルで。
「んー、家が近かったから」

「は? え? それだけ?」
「ああ、それだけ」

桜は後頭部をガシガシとかいてから、視線は真っすぐ学校を見ている。
そんな桜の様子を見て、私はビビビッときてしまった。

いわゆる女の感っていうやつだ。
桜はーー、確実に何かを隠し通そうとしている。

“何か”が何なのかは、わからないけれどーー……。
私は、桜のことを知りたい気持ちは山々だった。

でも、特別親しい仲でもない桜のことを、本人から根掘り葉掘り聞きだす
のは良くないと思い、私は口をつぐむ。

現に私だって、桜に、今の騎士の六華くんと上手くやれてるなんて、
嘘をついてしまっているから。