“可愛い”とワードに思わずドキッとする私。
いやいやいや……、ドキッって何、ドキッって。
私、そんなに可愛くないのを自覚しているはずなのに。
もし冗談で、“可愛い”と人から言われても、そんなに過剰反応しない
はずなのにーー。
「麗? 顔が赤い。熱でもあるのか?」
「う、うんん。な、なんでもないっ!」
私は慌てて顔を逸らし、頭をフル回転させて別の話題に切り替える。
「わ、私ね、セレブ婚しようと決めたの」
「セレブ婚……?」
「うん、お父さんが残した借金を返済して、お金に不自由しない
幸せな家庭を築くことが目標なんだ」
「ふーん、そうか。まぁ、頑張れ」
くしゃくしゃと大きな手で、頭を撫でられる。
桜の返答はそっけないものだったけど、不思議と言葉に温かみが
感じられて嬉しかったのであった。