今まで気付かなかったけど、桜の手は、大きくてゴツゴツしてて
初めて男の子の手なんだと感じた。

「じゃ、俺行く。手当してくれてありがとな」
彼は立ち上がり珍しく微笑して、くるっと背を向ける。

「ちょっと待って、もうすぐHR始まるのに自分の教室行かなくていいの?」
すたすたと裏門の出口に向かう桜に、そう言った私。

「あー、いいんだ別に。俺、不良だし、問題児だし。サボるのは、
朝飯前だから。どうせセンコーも生徒も、俺にビビッて何も言ってこない」

“何も言ってこない”……か、それはそれで寂しい気もするけど。

「ねぇ、桜、今日ぐらい授業受けたら?」
「拒否する」

「じゃ、じゃあ学校に着く途中まで、私の側にいてくれないかな?
その……もうちょっと話したいっていうか……」

桜は目を見開いて、でもすぐに微笑を浮かべる。

「俺に惚れたか?」
「ち、違うよ! さっきも言ったけど、ただ単に桜と話しがしたいだけ!」

強くそう主張すると、桜は「しかたないな」と笑ってそう言った。