まさか、こんな不良みたいな男の人に慰められてしまうなんて
私ってばなんて不覚を取ってしまったんだろう。

そう悶々と考える私と、隣で両手を上げて背伸びする桜。

私たちはひとけの無い、裏門の方角にある庭のベンチに並んで
座っていた。

寮周辺は、時間になると、沢山の生徒たちが登校時間で溢れかえる。
桜は私を気遣って、この場所に連れてきてくれた。

ふと、私は彼の手の甲を見て血が滲んでいることに気づく。

「桜、ケガしてるよ?」

「あー。お前と会うちょっと前に、喧嘩してさ。こんなの舐めと
きゃ治る」

「ダメだよ! ばい菌が入って悪化したらどうするの? 消毒液は
無いけど……、これなら持ってるから」

ガサゴソと鞄を漁(あさ)って取り出したのは絆創膏。

「別にいいって言ってんだろ」
「このぐらいさせてよ、その……、お礼も兼ねて」

桜の手をとって私は、傷口が隠れるように貼る。