「……え」
思わず口から言葉を零して、声のした方向を見ると見知らぬ男が2人、
立っていた。
彼らは私を嘗(な)め回すように見ると、「上玉だな」と意味の分からない
ことを呟いて、口角を吊り上げる。
「ねぇー、死んじゃう前にさ、俺たちと遊ばない? あ、もしかして家帰り
たくないの? 俺たちの所に来れば、楽にしてあげられるよ~?」
グイグイと容赦なく腕を引っ張らる。
こういう場面では、「助けて」と泣き叫べばよいのだろうか?
けど、生憎(あいにく)、私はーー……。
「いいですよ」
と、抑揚の無い声で返事をした。
「よーっし、じゃあ決まりだな! 名前はなんていうの?」
男がにこにこしながら、私の肩に手を回す。
「ーーおい、お前たちなにしてんだよ、その子を放せ」
……え、誰?
闇夜に浮かぶ、もう一つの影はゆっくりとこちらに歩いてくる。
月光で顔がはっきりと映し出された瞬間ーー、私に絡んでいた男たちは
舌打ちして、すたこら去って行ったのであった。