「……うんん~、ふぅ……っ、もっとぉ~……、」
曲がり角から、淫らな女の声……、と。
「君は本当に可愛いね」
間違えるはずもない、六華くんの声が、聞こえてーー。
私は慌てて、角の影に己(おのれ)の身を隠す。
そして、そっと覗けば、信じがたい光景が視界に入ったのであった。
なんとーー……、六華くんと見知らぬ女が、“キス”している。
しかも、お互いの唇を離したかと思えば、またお互いに吸い付くように、
何度も何度も。
「ねぇ~、六華ってどうしてあの子を姫にしたのぉ~?」
「姫にしたんじゃない、僕が無理やりされたんだよ、騎士に」
六華くんはやれやれと首を振る。
「ちょっと優しくしただけで、俺に勘違いして近づいてきてさ。
まぁ、でもいずれ捨てるから、あの花ヶ迫 麗は」
「あははっ、ひっど~い。けど、そうなったら私の為に騎士になって
くれる~?」
「もちろんだよ。だって君が本当の姫なんだから」