排他的に支配しろ





 車は何度か乗ったことがあるけれど。

 こんなに広々としていなかったし、座り心地もよくなかった。

 落ち着かなくてそわそわしてしまう。


 隣で運転する救世主の横顔を見ると、耳にたくさんのピアスが飾られていることに気付いた。

 先生にも開けている人はいたから、ピアスは知っている。けれど、あの棒状の金属は初めて見た。耳が串刺しになって痛々しいのに、なんだかかっこいい。



「救世主さん、大人なんですね」

「え、なに? とりあえず、救世主って呼ぶのやめて? 柄じゃないから。春日(かすが)ね、春日お兄さん」

「はい、春日さん。えっと、わたしは《支配》と呼ばれています」

「……、あー……? それ本名?」

「本名? 本名……は……」



 頭にぼんやり浮かんでくるバラバラ状態の漢字を組み合わせていく。

 それに父の名字をくっつけると、わたしの名前は完成だ。



(りん)……。神上(こうがみ) (りん)、です」

「こーがみ、りん、……知らないな」



 名前を呼ばれてビクンと体が反応する。

 ……久しぶりに、こっちの名前で呼んでもらった。