「あっ、見えてきたっすよー。あれが花屋の入り口っす」
ルイさんは一切恐怖を感じていないみたい。
すぐに明るく表情を変え、前を指差す。
川を繋ぐ橋。その先に、石畳の敷かれた区画が存在していた。
真っ直ぐ進んだ突き当たり。大きな門がわたし達を出迎える。塀は中の様子を一切見せないように囲んでいた。
まるで違う街みたいだ。景色だけじゃなくて、時代も……。
「ここからは歩きっす」
ルイさんに言われて、車から降りたとき。
「ウチは一見さんお断りよ。光峰 繚、おまえは呼んでいないはずだけど」
門の中から、きらびやかな着物を着た女の人が現れた。
何枚にも重ねられた衣装を、涼しげに着こなしている。



