胸板を押して離れようとしても、びくともしなかった。
光峰さんの後ろ姿から、凍てつくような空気を感じる。
怒ってる……絶対……。忠告されたことすらできないわたしに……。
「ルイさん……、離れて、」
「あはは。こんな簡単に捕まってたら、この先危ないっすよ?」
「お、お願いします……っ」
「んー、一旦どうにか頑張ってみてほしいっす」
「どうにか、って……ひゃっ!?」
余計に強く閉じ込められてしまった。
もしかして、こっちも怒ってる? ちゃんとした断りを入れていないから。
「──そこまでにしてください」
冷たい声が飛んでくる。
声の主は前を向いたままで。
銃口だけがわたし達に突き付けられていた。
「……今日はお休みしてていいんすよ?」
「仕事のつもりはありません」
「あはっ、素直じゃないっすねー」
体の自由が戻る。
た、助かった。光峰さんの銃、持ち歩いてるのかな。今まで向けられたことがないのは奇跡かも……。



