「本当に嫌がらないね……なんで泣いたの?」

「き、気持ちが、溢れてきて……」

「へえ、どんな?」

「それ、は」



 春日さんに愛されている気がして──なんて、到底言えない。

 思い込みだというのは知っている。だからこそ、そう感じたままでありたい。



「……悪い意味では、ないです」

「ふうん?」



 薄く笑みを浮かべながら、春日さんはまた顔を寄せてくる。



「まだするんですか……?」

「悪~いお兄さんに味占められちゃったね~」

「わ、悪くはないですが……」



 香りとか、春日さんの顔とか。強く感じるほど緊張するので、なるべく一度で済んだらいいなとは思う……。

 けれどわたしに拒否する気持ちはなくて、春日さんが望むなら応えたい。



「はは……なんか調子狂うなあ」



 優しく包み込まれる。腰を引き寄せ、わたしの肩に頭を乗せてきた。

 そんなことされてしまえば、心臓は大忙しだ。ドクドクと、鼓動は大きく鳴り始める。

 絶対伝わっているのに……春日さんは気にする様子もない。



「あのねえ……薄々思ってたけど、俺のことちょっと美化しすぎかもな~」