「どういうことするか知ってる?」
「体力仕事をするんですよね?」
「……うん、たぶんよくわかってないな」
春日さんが光峰さんを疑った目で見る。光峰さんはそっぽを向いて目を合わせないようにしていた。
「まぁ、俺も急かしすぎたかもね。もう一晩泊まっていいよ。俺も教えるから、じっくり考えよ」
「えっ……! やっ……」
やった──と、出そうになったところを抑える。
春日さんの負担を増やしているだけなのに、喜んじゃいけない。
心は誤魔化せないけれど、あくまで表面上は控えめに。
……一日、一緒に過ごせる時間が増えちゃった。
「ということは、まだリンちゃんはウチに来ないってことっすか? じゃあ、カスガくんカスガくん! 僕と花札しよー!」
「うお」
花之木さんが春日さんに飛び付いた。
懐いているのが見てとれて、まるで弟みたいだ。
思わず自分のキョウダイと重ねてしまう。
わたしは能力開発のためにみんなと別行動をするときが多かった。あんな風に仲良くできていたかと問われれば、堂々と肯定はできない。
それが事件の前触れに気付かなかった原因でもあるのだろう。



