最後に、くるっとわたしを振り向く春日さん。
ドキリと鼓動が高鳴った。
「りん」
彼は他の人とは違う。
光峰さんも花之木さんもわたしの名前を呼んだけれど、ここまで嬉しくなるのは春日さんだけ。
「泣かせてごめんね」
どうして謝られているのか、わからない。
わたしにとってあのキスは素敵なものだった。
だから、春日さんの服を摘まんで、ふるふると首を振る。
「嫌じゃなかったので……。お願い、もう一つ言ってもらって大丈夫ですよ……」
「……え」
「なんなら、その……口寂しくなったら、いつでも、どうぞ」
すごいこと言ってしまった。
頬がチリチリと熱い。
「……はは。変な子」
春日さんは小さく笑い、わたしの頭を軽く撫でた。
『変』って言葉は、襲ってきた人にも言われた。でも、春日さんからの『変』はちょっとくすぐったい。
……そこまで悪い意味を含んでいないのが、言い方から感じるからだろうか。
「りんは、花屋に行くの?」
「……はい」
光峰さんに挑発されたところは多少あったけれど。



