あ。
そうだ。
わたしがこうして逃げてきたのは。
先生達が悪党だって理解したからだった。
この人も同じ。
悪なんだ。
「っ、離し──」
「あ゛ー……今日が人生で一番ボロ負けの日……もうやめたいやめられない俺のカス……」
わたしが声をあげるのと同時。
悲壮感を漂わせながらトイレに入ってきた長身の男の人は、
「……え~? ちょっと何してるの、人の見て興奮するほど精神力残ってないよ、も~」
いかにも面倒な状況に鉢合わせしまった、とわかりやすく顔に書いて立ち止まった。
白っぽい髪色、派手な柄がプリントされたシャツ、朝焼けみたいな色のサングラス。
なんとなく、助けてくれなさそう……。
頼ってはならないオーラがひしひしと感じ取れる。
それはわたしに危害を加える男の人も同じらしく、一瞬狼狽えたもののすぐに力を入れ直す。
「邪魔すんなら、出てけよ」
「あ~そうだよね。う~ん、どうしよ」
ぶつぶつ独り言を呟き、長身の男の人はわたしを見た。
「助け、必要?」
協力的な姿勢なのが予想外で、若干迷いつつ……頷く。



