そのとき、コンコンコン、と扉を叩く音がして。
「臨さん、調子はいかがでしょうか。……なんですか、この空気は」
光峰さんの動きが停止してしまうくらい、わたしは重い空気を作っていた。
理解している。これは一時の快楽に夢中になった、わたしの責任。
名残惜しくなる理由はない。
「キスしたらこうなっちゃった」
「結局手を出したんですか」
「意識あるときの方がいいなって」
「その結果落ち込ませてますが」
「南蜘蛛がどういう場所か、わかりやすいでしょ」
二人の会話は耳に入って、消える。頭に入ってくれない。
「臨さん」
光峰さんが春日さんを押し退けてわたしに近付いた。
「食事をご用意しておりますが、召し上がりますか?」
穏やかな笑顔。
しかし機械的なものを感じるのは、彼が機械だという先入観からか。
「ありがとうございます……いただきます」
体を起こし、地面に足を付ける。
そういえば、ここは娯楽室ではない。
わたしが迷惑なことに突然眠ったから、移動してくれたんだ。
……きっと、春日さんが。



