「……能力は、いらないんです。完璧じゃないからこそ……不完全な人達の気持ちを汲んで、救えるんだと思います」
わたしが素敵だと思ったところは、彼の能力じゃない。
この街に来る人は、みんな後ろ暗い事情を持っている。
消せない間違いがあって、けれどどうしても生きていたくて。
南蜘蛛という強い名前と、優しい心。その二つを持ち合わせたからこそ救われている人は、この街にたくさんいるだろう。
わたしもそうだから。
「あー……はは、」
春日さんの顔がわたしの首筋に埋まる。
「一生逃がさないけど、いいの?」
「はい、もう逃げません」
「っ、……うん」
顔を上げた春日さんの表情を見る前に、突然塞がれた唇。
驚いている間に、もう一度柔らかい感触に襲われる。
「こうやってさ」
「んむ、っ……」
「これからも俺は口寂しいとかしょーもない建前で、キスをねだるよ」
建前で……って。
口寂しいは嘘だったってこと?
「逃げたおしおき分、いっぱいりんのことちょうだい」



